なぜ自作したのか
税理士事務所では、申告書の提出前に複数の確認作業が発生する。数値の転記ミス、計算の整合性、添付書類の過不足チェックなど、件数が増えるほど見落としのリスクが高まる。
市場には税務申告を支援するソフトウェアが複数あるが、既存ツールは大手事務所向けに設計されていることが多く、中小規模の事務所の業務フローには合わない部分も多い。また導入コストも無視できない。
そこで、Claude Codeを使って「自分たちの確認フローに合ったチェックツール」を自作することにした。プログラミングの経験がない税理士でも、Claude Codeに作らせれば動くものができる——というのが試みのきっかけだった。
どんなツールを作ったか
最初に作ったのは、確定申告書のチェックスクリプトだ。具体的には以下の機能を実装した。
数値の整合性チェック
エクセルで管理している申告書データを読み込み、各シート間の数値が整合しているかを確認する。
import pandas as pd
def check_tax_return_consistency(excel_path: str) -> list[str]:
issues = []
# 収支内訳書と確定申告書の所得金額が一致するか確認
income_sheet = pd.read_excel(excel_path, sheet_name="収支内訳書")
tax_return_sheet = pd.read_excel(excel_path, sheet_name="確定申告書")
income_total = income_sheet["所得金額合計"].sum()
declared_income = tax_return_sheet.loc[0, "所得金額"] # 第一表
if abs(income_total - declared_income) > 1: # 1円以上の差異
issues.append(f"所得金額の不一致: 収支内訳書 {income_total:,}円 / 申告書 {declared_income:,}円")
return issues
AIによる記載内容の確認
数値の整合性だけでなく、記載内容の適切さをAIに確認させる機能も追加した。
def review_with_ai(申告データ: dict) -> str:
prompt = f"""以下の申告データについて、よくある記載誤りや確認が必要な点を指摘してください。
申告データ(個人情報は除外済み):
{json.dumps(申告データ, ensure_ascii=False, indent=2)}
確認ポイント:
1. 経費の科目分類が適切か
2. 控除の申告漏れの可能性がある項目はあるか
3. 添付書類が必要そうな項目はあるか
注意: これは機械的な確認補助であり、最終判断は担当税理士が行ってください。
"""
response = client.messages.create(
model="claude-opus-4-5",
max_tokens=1500,
messages=[{"role": "user", "content": prompt}]
)
return response.content[0].text
チェックリストの自動出力
確認結果をHTMLレポートとして出力する機能も実装した。担当者ごとの確認ステータスを追跡できる形式にすることで、チームでの作業管理にも使えるようになった。
Claude Codeへの依頼の仕方
このツールを作るにあたって、実際にClaude Codeに指示した内容の一例を紹介する。
Excelの確定申告書データを読み込んで、以下の確認を行うPythonスクリプトを作って。
1. 第一表の所得金額合計と、収支内訳書の合計が一致しているか確認する
2. 控除額の合計が正しく計算されているか確認する
3. 問題があればリスト形式でエラーメッセージを出力する
Excelのシート名は「第一表」「収支内訳書」「控除明細」です。
列名は実際のExcelファイルを後で指定します。まず基本的な構造を作ってください。
この指示でClaude Codeが基本構造を作り、実際のExcelファイルを渡しながら調整していった。プログラミング知識がなくても、「何を確認したいか」を言葉で伝えれば、Claude Codeがコードに変換してくれる。
導入コストと効果
APIの利用コストはかかるが、既製ツールの導入費用と比較すると大幅に安い。月の利用コストは使用量によるが、中規模の事務所でも月数千円程度に収まることが多い。
業務効果としては、1件あたりのチェック工数が従来の約半分になった。また、見落としによるミスが減り、差戻しの件数も減少したという。
注意事項
税務申告はミスが許されない業務だ。AIが確認した結果は必ず人が検証する。ツールはあくまでも「見落とし防止の補助」であり、「確認の代替」ではない。この前提は運用開始前にチーム全員で共有しておくことが重要だ。
また、税制は毎年改正されるため、チェック項目も定期的に見直す必要がある。改正内容を反映したプロンプトの更新は、税理士が行う必要がある。
まとめ
税理士事務所でのClaude Code活用は、「高いツールを買わずに自分たちに合ったツールを作る」という観点から有効だ。プログラミングの知識がなくても、業務の流れを言葉で説明できれば、Claude Codeが動くスクリプトを作ってくれる。申告書チェックのような定型確認作業から始めると、AI活用の効果を実感しやすい。