社内FAQの「属人化」を解消する

中小企業でよくある問題のひとつが、社内知識の属人化だ。「経費精算のやり方は田中さんに聞く」「有給申請のフォームはどこにあるっけ」——こうした問い合わせが特定の担当者に集中し、本来の業務を妨げている。

O社(従業員80名のIT企業)では、Notion・Slack・Claude APIを連携した社内FAQボットを構築し、社内問い合わせの60%を自動応答できるようにした。月間で担当者が対応していた問い合わせ件数が200件から78件に減少した。

システムの全体設計

O社が構築したシステムの全体像は以下の通りだ。

  • ナレッジベース:Notion(社内FAQ・規程・マニュアルを集約)
  • 問い合わせチャンネル:Slack(#helpデスクチャンネル)
  • AI処理:Claude API(Notionのデータを参照して回答生成)
  • 連携:Make(MiddlewareのZapier代替)でSlack→Claude→Slack

社員がSlackの#helpデスクチャンネルに質問を投稿すると、Claudeが自動的にNotionのナレッジベースを参照して回答を返す仕組みだ。

ステップ1: Notionのナレッジベース整備

AIが正確に回答するためには、参照するドキュメントの品質が最も重要だ。O社では以下のカテゴリでNotionページを整備した。

  • 人事・労務(有給・育休・給与・評価)
  • 経費・精算(申請方法・上限・カテゴリ)
  • ITツール(Slack・Notion・各種SaaSの使い方)
  • 社内手続き(稟議・発注・契約書)
  • 福利厚生・制度

各ページは「Q&A形式」で書くことを徹底した。「有給休暇の申請方法」というページタイトルよりも、「有給を申請したい。どうすればいいですか?」という質問形式の方が、AIがより的確に参照できる。

ステップ2: Claude APIとNotionを連携する

Notion APIでページのコンテンツを取得し、それをClaudeのコンテキストとして渡す仕組みを実装した。

シンプルな実装の流れ:

# Notion APIでFAQページのコンテンツを取得
notion_content = get_notion_page_content(page_id)

# Claude APIに質問と共に渡す
response = claude.messages.create(
    model="claude-3-5-sonnet-20241022",
    max_tokens=1024,
    system=f"""あなたは社内FAQアシスタントです。
以下のナレッジベースの情報のみをもとに回答してください。
情報がない場合は「担当者に確認します」と答えてください。

{notion_content}""",
    messages=[{"role": "user", "content": user_question}]
)

実際のO社の実装ではNotion全ページのコンテンツをベクトルデータベース(Pinecone)に格納し、質問と関連性の高いページを検索してからClaudeに渡すRAG構成を採用している。しかし小規模からスタートするなら、まず主要なFAQページのコンテンツを直接渡すシンプルな方法で試すことをすすめる。

ステップ3: SlackとMakeで自動化する

MakeのSlackトリガーを使って、#helpデスクチャンネルへの投稿を検知する。

  • トリガー:Slack「特定チャンネルへの新規メッセージ」
  • アクション1:Python(Claude API呼び出し)でFAQを参照して回答を生成
  • アクション2:Slack「スレッドに返信」で回答を投稿

Makeはコードを書かなくても視覚的なノードでフローを組めるため、非エンジニアでも実装しやすい。ただしClaude APIの呼び出しにはHTTPリクエストモジュールを使う必要があるため、APIの基本的な使い方の理解が必要だ。

HubSpotとの連携(顧客向けFAQに応用)

O社ではさらに、HubSpotのチャット機能とも連携している。顧客からの問い合わせをHubSpotのCRMに取り込みながら、よくある質問には自動応答するフローだ。

社内FAQと顧客向けFAQの違いは「参照するナレッジベースの内容」だけで、仕組みは同じだ。HubSpotにはWebhook機能があるため、問い合わせが来たら自動的にMakeを経由してClaudeで回答を生成し、HubSpotに書き戻すことができる。

運用の継続的な改善

AIが答えられなかった質問をログに残す

Claudeが「担当者に確認します」と返答した質問のログを週次でNotionに蓄積し、FAQページに追加する。使い込むほどにナレッジベースが充実し、自動応答率が上がる。

回答品質のモニタリング

Slackのリアクション機能を使い、回答が役立ったときは「👍」、役立たなかったときは「👎」をつけてもらうルールを設けた。低評価が続く質問カテゴリを発見したら、Notionのドキュメントを改善する。

導入3か月の結果

  • Slackの#helpデスクへの月間問い合わせ:200件 → 320件(質問しやすくなった)
  • AIが自動応答した割合:60%(192件)
  • 担当者が対応した件数:200件 → 128件
  • 担当者の問い合わせ対応時間:月35時間 → 月14時間

問い合わせ件数は増えたが、AI自動応答によって担当者の実作業は減った。「気軽に聞ける窓口がある」という安心感から、社員の疑問解決速度が上がった副次効果もある。

まとめ

社内FAQのAI化は、Notion(ナレッジベース)+Make(自動化)+Claude API(AI処理)+Slack(インターフェース)の組み合わせで構築できる。最初のステップはNotionのドキュメント整備で、ここを丁寧にやることが自動応答精度の鍵になる。エンジニアがいなくても、これらのSaaSを組み合わせる程度の技術知識があれば実現できる取り組みだ。