Copilot+ PCとは何か

Copilot+ PCはMicrosoftが2024年に発表したPC製品カテゴリで、特定のハードウェア要件を満たしたPCに与えられる認定だ。要件の核心はNPU(Neural Processing Unit)の搭載で、40TOPS以上の演算性能を持つNPUを内蔵することが条件になっている。

QualcommのSnapdragon X、Intel CoreウルトラシリーズのNPU搭載モデル、AMDのRyzen AI搭載機が主要な対応プロセッサで、Surface ProやDell XPS、Lenovoの一部ThinkPadなどがCopilot+ PC認定を受けている。

2025〜2026年にかけてCopilot+ PC対応モデルが各メーカーから相次いでリリースされ、AI機能をハードウェアで支えるPCという概念が徐々に市場に浸透してきた。

NPUとは何か——GPUやCPUとの違い

NPU(Neural Processing Unit)は機械学習の推論処理に特化した演算チップだ。行列演算を並列して高速に処理することで、AIモデルの実行をCPUやGPUより効率よく行える。特に「常時起動」「バッテリー効率重視」の用途に向いており、クラウドに頼らずデバイス側でAI処理(オンデバイスAI)を行うための基盤になる。

スマートフォンでは数年前からNPUが標準搭載されており(AppleのNeural Engine、QualcommのHexagonなど)、PCへの搭載はその流れのデスクトップ版だ。

NPUがあることで何が変わるかというと、クラウドにデータを送らずに端末内でAI処理が完結できる。プライバシーとレイテンシの両面でメリットがある。

Recall——論争を呼んだ機能

Copilot+ PCの目玉として発表されたRecallは、PCの操作画面を定期的にスクリーンショットして検索可能にする機能だ。「先週見たあのWebページを探したい」「3ヶ月前に編集したExcelはどこに保存したっけ」という状況で、自然言語でPC内の活動履歴を検索できる。

ただしこの機能は2024年の発表直後から強い批判を受けた。

プライバシーの懸念

Recallは文字通りすべての画面をキャプチャして保存する。パスワード入力画面、銀行口座の画面、プライベートなメッセージ——あらゆるものが記録される可能性がある。Microsoftはデータをローカルに保存しクラウドに送信しないと説明したが、それでも「端末にそれだけの操作ログが残る」こと自体がセキュリティリスクだという指摘が相次いだ。

セキュリティ研究者がRecallのデータを抜き出すツールを公開し、エクスプロイトが可能であることを実証したことで、Microsoftはリリース直前に機能をオプトイン(初期状態ではオフ)に変更した。現在もRecallを使うには明示的に有効化が必要で、企業向けのIT管理ツールでは無効化ポリシーが設定できる。

実業務での使い勝手の変化

Recall論争が目立つが、Copilot+ PCにはそれ以外のAI機能も搭載されている。

Cocreator in Paint

MSペイントにAI画像生成機能が統合され、テキストプロンプトから画像を生成したり、描いたスケッチをAIが清書したりできる。オンデバイスで動作するため、クラウドへのデータ送信なしに使える点は差別化だ。

Live Captions(リアルタイム字幕翻訳)

オンライン会議や動画の音声をリアルタイムで文字起こし・翻訳する機能。英語の会議でリアルタイム日本語字幕を表示できる。これは実務での実用性が高く、グローバルチームとの会議で使っているユーザーからの評価が高い。

Windows Studio Effects

ビデオ会議時のポートレートぼかし、顔自動フレーミング、ノイズキャンセリングなどをNPUで処理する。これらはZoomやTeamsが独自に実装してきた機能だが、OS側で提供することでどのビデオ会議アプリでも使えるようになった。

Copilot+ PCは買う価値があるか

AI機能を目的に現行機種からCopilot+ PCに乗り換えるかどうかは、現時点ではまだ迷う余地がある。NPUを活かしたキラーアプリがまだ少なく、「NPUがなければできないこと」が限られているからだ。

ただしSnapdragon X搭載Surfaceの場合、CPU性能とバッテリー持続時間のコストパフォーマンスが高く、AI機能を抜きにしても魅力的なデバイスになっているという評価もある。

次の買い替えタイミングであれば、Copilot+ PC対応機種を選ぶことを検討する価値はある。2026〜2027年にかけてNPUを活用したアプリが増えることが見込まれており、先行投資として捉えることもできる。

まとめ

Copilot+ PCはNPU搭載による「オンデバイスAI」を実現したPCカテゴリで、Recall・Live Captions・Windows Studio Effectsなどのアシスト機能を提供する。Recall機能のプライバシー問題は現在もオプトイン設定で対処されている。実業務での恩恵はLive Captionsのようなリアルタイム処理機能でわかりやすく、グローバル業務を行う環境では導入効果を感じやすい。