3か月使い続けて、はっきりわかったことがある。Gemini for Google Workspaceは「Googleサービスの中で完結している人」には確実に刺さる。逆に、ExcelやWordが業務の中心にある人には少し違和感が残る。

GmailでのGemini——要約と返信草稿の使い勝手

一番使う場面は、やはりGmailだ。長いメールスレッドを「要約」ボタンひとつで圧縮してくれる機能は、毎朝のメールチェックにかかる時間を体感で3割くらい減らした。

返信の草稿生成も悪くない。「了承の返信を書いて」と指示すると、スレッドの文脈を読んだうえで適切なトーンの文章を出してくれる。ただし、日本語の敬語ニュアンスが少し硬めになる傾向があって、そのまま送ると少し違和感が出る。下書きとして使い、自分の言葉に直す前提ならかなり助かる。

弁護士や税理士の事務所では、クライアントへの返信メールが多い。Geminiの草稿生成を使って、内容確認に集中できる状態を作るのが現実的な活用法だと思う。

Google DocsでのGemini——文書作成支援の限界と可能性

Docsでは、サイドパネルからGeminiに指示を出せる。「この契約書の要点を箇条書きにまとめて」「提案書の序文を書いて」といった依頼が自然な会話形式でできる。

提案書のたたき台を作る用途では十分に使える。見出し構成を作らせて、各セクションの内容を人間が肉付けするというフローが現実的だ。全文を丸ごとAIに書かせると、均質で個性のない文章になりやすいので、セクション単位で使うのが正解に近い。

問題は、ドキュメントの「中身」を深く読み込む精度がまだ安定していないことだ。長い文書に対して「第3章の要点を抜き出して」と聞くと、的外れな答えが返ってくることがある。Notion AIと比べると、自社ドキュメントへの食いつきがやや弱い印象だ。

Google SheetsでのGemini——数式生成が地味に強い

Sheetsでの使い道で一番驚いたのは、数式の自動生成だ。「売上の前月比を出したい。C列に今月の数字、D列に先月の数字が入っている」と日本語で伝えると、正確なFORMULA式を返してくれる。Excelでも似たことはできるが、Googleのエコシステムをフルクラウドでつないでいるなら、切り替えずに使えるのが強い。

関数のエラーを説明させる使い方も便利で、「#REF!エラーが出た。何が原因か」と聞くと原因と修正方法を教えてくれる。Excelに慣れていてSheetsを使いこなせていないユーザーには、かなりのサポートになる。

Google SlidesでのGemini——プレゼン作成は「補助」止まり

Slidesでは、議題からスライド構成を提案する機能が一番よく使う。ただし、デザインのクオリティはほぼ変わらず、あくまでコンテンツ面の補助だ。"かっこいいスライドをAIに作ってもらう"というイメージとは少し違う。

議題と要点を渡して構成を出させ、中身を自分で埋めるというフローが現実的。テンプレを探す手間と、ゼロから構成を考える手間を省く道具として使うのが正解だ。

Microsoft 365 Copilotとの違い

率直に言うと、WordやExcelとの連携深度はCopilotの方が高い。ExcelでのCopilotは、ピボットテーブルの作成やグラフ挿入まで一気にやってくれる場面があり、Sheetsより一歩進んでいると感じた。

一方で、Gmailとの連携はGeminiに分がある。Outlookより直感的で、スレッドの要約精度も使いやすい。結局のところ、普段使うツールがGoogleかMicrosoftかで選択肢は決まる。両方を行き来しているなら、どちらか一方に統一した方が生産性は上がる。

料金と費用対効果

Gemini for Google Workspaceは、Business Starterプランで月額$2/ユーザーほどの追加費用で使える(プランによって異なる)。Copilotが月額$30/ユーザーと比べると安価で、試しやすい価格帯ではある。

ただし「安いから入れておく」という感覚で全社展開すると、使いこなせない人が大多数になりやすい。まず数名のヘビーユーザーが使い方を確立してから、水平展開する順序が現実的だ。

向いているチーム・向いていないチーム

Google Workspaceをフル活用しているチームには向いている。特にGmailとDocsが業務の中心になっているなら、Geminiの効果が素直に出る。

逆に、社内システムがオンプレミスで、Googleへの情報共有に制約があるチームには向かない。士業事務所などで機密性の高い情報を扱う場合は、どのデータをGeminiに渡すかをポリシーとして決めてから使い始めることを勧める。

3か月使った総評としては、「Googleユーザーには確実に価値がある。ただし使い方を覚える時間が最初にかかる」という感じだ。魔法のように全部やってくれるわけではないが、ルーティン作業の時間を確実に削れる道具には育っている。